2014年3月10日月曜日

かげぼうし

(ちひろさんに贈る歌)

先の「まあるい気持ち」に続いて、抽象的なお話です。第三者にはあまり分からないんですが、当事者にはストレートに伝わるのでしょうね。

筒井康隆の小説『家族八景』に、抽象画家のエピソードがあります。テレパスである火田七瀬が、画家の心を覗いてみると、抽象的と思われたシンボルが、実は具体的な人を示しているというお話でした。

では、その抽象画が他の人にとって意味がないかというと、そういうわけではなく、誰もが自分の中の何かに置き換えて解釈することで、芸術として成立するのでしょう。抽象画のことを英語で「abstract」と呼びますが、これは「要約」という意味でもあります。自分の考えていることを抽出して目に見える形(象)にすることが「抽象」なのでしょう。

内容も、「まあるい気持ち」と同様、何かに思い悩んでいるようです。ときどき、何か大きな不安がやってくる、という経験は、特に若い頃は誰にでもあるのではないかと思います。

そして、この曲の最後はこう結ばれます。

これは不安で、幸せなんだ ここにいていいよ、って受け入れて
手をつなごう

宮崎奈穂子さん、あるいはエピソード主がどう思っているのかは分かりませんが、私は「不安に思うというのは、自分が一所懸命生きているということ」だと解釈しました。

最後の「手をつなごう」は、どんな不安があっても仲間がいれば乗り切れるというメッセージではないでしょうか。

メロディは、宮崎奈穂子さんらしい感じに仕上がってます。文章で伝えるのは難しいのですが、たとえば最初の1フレーズはこんな感じです。

寂しいわけじゃないんだけど 心がぽっかり
いつだって前を向いていたいのに (*)ずっしり

2つのフレーズは、ほぼ同じリズムで「寂しいわけじゃないんだけど」と「いつだって前を向いていたいのに」が対応します。そして次の「心がぽっかり」と「ずっしり」を対応させるため、(*)の部分「心が」に相当する文字が入るべき所に休符が入ります。

このパターンは、宮崎奈穂子さんの曲にしばしば見られます。もし宮崎奈穂子検定があれば、きっと試験に出ます。

前に、K-POP歌手の「Kさん」という方のラジオ番組「K-Style」に出演したとき、Kさんから「子供の時からピアノをやってて、たくさんの曲をピアノで作っていると、手の癖みたいなものが出て、似たパターンになってきませんか?」と聞かれていました。「まさしくその通りだ」と答える宮崎奈穂子さんに対して「だから、ぼくは(ピアノの手の癖が出ないように)最初はピアノに向かわないんですよ」とアドバイスをしていました。

その時のブログ記事が「「K-style」ありがとうございましたっ!!」ですが、作曲のエピソードについては書かれていませんでした。

ちなみに、このKさん、ゲストのことを本当によく勉強されていました。質問も的確で、今まで見聞きしたテレビやラジオの中で、一番よく出来ていたインタビューだと思います。放送後、しばらくオンデマンド配信されていたのですが、もうありません。リンクが切れているだけかもしれませんが、取り下げたURLを公開するのもマナー違反な気がするのでやめておきます。

DSC03647S
▲癖なのか、意図的なのか、御礼のお辞儀は合掌

0 件のコメント:

コメントを投稿