世の中、なかなか自分の思ったようにはいかないものですが、だからといって何もしないともっとうまくいかないので「毎日じたばたしよう」という歌です。
宮崎奈穂子さんが初めて路上ライブに立ったのは事務所の方針だったから、というのはよく知られたエピソードです。
予想もしていなかった話ですが
これだけやって駄目だったらあきらめよう
これだけやって駄目なんだから、仕方ないと思えるはず
と思った話が何かのインタビューで語られていました。
この曲では「どうせ結果が最初から分かっているものじゃないのだから、迷っていても仕方ない、自分が思った方に進めば、何かいいことが起きるんじゃないか」ということが語られています。
また
人生をすいすい泳げたことはない 溺れてばかりで必死で
なんとか水に浮かんで手足を動かしてたら
実は1mmずつ前に進めてたこと 後から気づいた
というフレーズがあります。準備ができていなくても、沈みさえしなければ前に進めるということでしょうか。
そういえば、英語の慣用句に
sink or swim
というのがあります。
直訳すると「沈むか、泳ぐか」です。
英語の「or」は「さもなくば/それが嫌なら/どちらかを選べ」というニュアンスがあります。米国ニューハンプシャー州の自動車ナンバープレートには「live free or die」と書いてあり、「自由か、さもなくば死を」と訳されます。Live freeはいいとしてor dieはやり過ぎだろ、と突っ込んでいた友人がいますけど、キャッチコピーですから大目に見てください。
つまり「sink or swim」は「沈むのが嫌なら泳げ」、要するに「やるしかないんだ」ということです。
でも、私は「沈みさえしなければ泳げる」という解釈をしてみました。
もっとも、英語の「sink or swim」の本来の意味は「一か八か」というニュアンスもあるのだそうです。「沈むか泳ぐかは運任せ」ということでしょうか。用例を見ていると「沈むか泳ぐかは努力次第」という意味で使うことも多いようでした。
日本語もそうですが、英語も慣用句の意味が変わっていくのかもしれませんね。
A rolling stones gathers no moss (転がる石に苔はつかない)
も、本来は「ひとつのことに集中しないと大成しない」という意味で、日本語だと
石の上にも三年
に近い意味です。
ところが、現在では「常に動いていると、ずっと新鮮なままいられる」という、全く逆の意味で解釈されることがあります。この話は、中学のとき「ロックバンドThe Rolling Stones以降に一般的になった」と習いましたが、裏付けは取れていません。
もう1つ、この曲で特徴的なフレーズは「1mmずつ(1ミリずつ)」という表現です。歌詞カードには「mm」とあるので長さの単位だと分かりますが、実際は「イチミリ」と歌っています。
宮崎奈穂子さんの曲には、「目標に近付くまでのわずかな進歩」の意味で「1ミリ」という言葉がよく出てきます。覚えておいてください。ミリグラムでもミリ秒でもない、ミリグラムの意味です(日常会話でミリグラムやミリ秒が出てくる人は少ないと思いますが)。
おまけ
英語のWikipediaには「Live Free or Die」という項目がありました。米国では非常に重要な問題のようです。これによるとニューハンプシャー州が州のモットーとして正式に採用したのは1945年だそうです。
▲ニューハンプシャー州のナンバープレート
▲DEC(Digital Equipment社)が作成したニューハンプシャー州風のフレート
UNIXは、特定のハードウェアやベンダーに依存しない(vendor free)用に設計された初めてのOSという意味で作られたようです。