「歌・こよみ365完全版」ディスク15は、「前進」がテーマのようです。2曲目は、東京はこんなにたくさんの人がいるのに、どうしてか人が遠い、でも何とか一歩進もうという歌です。
東京は、人が多い割に人間関係が希薄だと言われますが、いったんつながり始めると、交通の便のいい東京の方が密接な人間関係を作れるように思います。
東京が、疎外感の象徴のように言われ始めたのは、1960年代高度成長期が始まった頃に「集団就職」という制度が出来たあたりではないかと想像しています。
「集団就職」は、中学を卒業してすぐ、地方から東京に就労することです。当時は高校進学率もそれほど高くなく、義務教育終了後の中卒が最も多かったようです。
集団就職は1970年頃まで続いたそうですが、この頃には「コンクリートジャングル」という言葉が使われ「東京は、鉄筋コンクリートのビルが乱立するジャングルのようで、誰も助けてくれない」というネガティブなイメージがありました。
もちろん、これはビルが悪いわけでも東京が悪いわけでもなく、単身上京した人の生活環境の問題です。東京出身者にとってはちょっと嫌な気分だったんじゃないかと思います。
1969年に発表された小説「赤頭巾ちゃん気をつけて」(庄司薫)では、主人公である庄司薫が、ガールフレンドの由美ちゃんと銀座の夜景を見ながら「東京は悪く言われるけど、ほんとにきれいよね」と会話するシーンがあります。
庄司薫は、主人公の名前であるとともに、作者のペンネームでもありますが、いずれにしても生粋の東京人です。世間のネガティブな評価に対する反発が、軽く描かれています。
宮崎奈穂子さんも東京出身だそうで、もしかしたら「東京は冷たい」という言葉に、ちょっと悲しい思いをしているかもしれません。あるいは、東京といっても郊外の住宅地のようなので、銀座や丸ノ内を中心とした「東京」と同じ地域とは思っていないかもしれません。
いずれにしても、東京はほんとに人が多い。地方から尋ねてきた親御さんに「今日はお祭りかい?」と質問されたという話を聞いたのは1人や2人ではありません。
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