2014年10月26日日曜日

セレンディピティ(201/365)

「セレンディピティ」は、思わぬものを偶然に発見する才能を意味します。

この曲は、幸せになりたい女の子が旅の途中で転んだ時、「痛いの痛いの飛んでいけ」というおまじないを教えてもらったことから始まります。

おまじないの効果があったので、偶然見つけた怪我をしたウサギに試したら、やっぱり効果があって、それが嬉しくて、誰かの痛みを治すことが目的になり、女の子の夢は、幸せになることから、幸せに気付いてもらうことになった、という話です(そして、その夢はかないました)。

この話で大事なことは、女の子の目的は変わったものの、結果として「幸せになる」という最初の目的は達成されていることです。

人間は、もともと自分の快楽より、人が喜んでいる姿を見ている方が楽しい性質を持っているようです(「大人って(118/365)」や「ACTION ~あなたが背中を押してくれたから~」で書いた通りです)。

思わぬものを偶然発見したけれど、結果としては当初の目標が達成されているのが面白いと思います。

旅に出て欲しいものを得るといえば、「オズの魔法使い」です。何度か映画やドラマになっていて、ラストは微妙に違うのですが、ストーリーは同じで、ドロシーという少女とともに、脳みそがない(だから考えることができない)カカシ、心のないブリキの木こり、勇気のないライオンとともに旅をする話です。

旅の途中、さまざまな困難なことがありますが、みんなで協力して切り抜けます。最終的に、オズの魔法使いから、粘土の脳、スポンジで作った心臓(英語では心と心臓は同じheartです)、勇気が出る薬と言われたオレンジジュースをもらいます。すべて偽物ですが、全員が旅の途中で、それぞれ欲しいものを手にれていたという話です。

『セレンディピティ』の女の子も、幸せになりたいと思いながら、当初の目的とは違う道に進みますが、結果として幸せになっています。

ちょっと寄り道をしていると思っても、最終的には思いがかなうという話じゃないかと思います。

そもそも、人間のキャリアは偶然の産物であるという説があります。これについては、別のブログで「【読書日記】路上シンガー宮崎奈穂子」という記事を書きました。その一部を抜粋します。


人間のキャリアの多くは偶然作られると言われる。目の前のことに全力で取り組み、できることをやっているうちにキャリアが自然と作られる。1つの目標に固執すると、かえってキャリア形成を阻害する。スタンフォード大学のクランボルツ氏はこれを「計画された偶発性理論」と呼んだ。

クランボルツ氏によると、予想しない偶然的な出来事を活かすには以下の5つの要素が必要だという。

  1. 好奇心
  2. 持続性
  3. 楽観性
  4. 柔軟性
  5. 冒険心(リスクテイキング)

面白いことに、宮崎奈穂子にはこれらの要素がすべて備わっている。彼女は「歌手になる」という目標を立て、一直線に進んでいったように見えるが、本書を読むと案外寄り道の多いことが分かる。小学生のときは、合唱部とブラスバンド部の両方に所属していた。どちらかを選びなさいと迫る母親に対して「両方やる」ときかなかったという(好奇心)。

中学では吹奏楽部に入り、肺活量を付けようとサックスを担当したかったのに、担当したのはパーカッション。しかも最初の半年はメトロノームに合わせて1日3時間机を叩き続けた。もともと「同じことを継続する習慣があった」というが、本意ではないことをこれだけ続けられるのは普通ではない(持続性)。

後になって「この経験が基礎的なリズム感を養うことができた」と振り返るわけだが、当時は「なんでこんなことやっているのだろう、選択を失敗した」と思ったこともあるに違いない。しかし、ここで「歌手になるには無駄な作業だ」と思って、1日30分しか練習しなければ本当の無駄になってしまったかもしれない。3時間やったからこそ役に立ったと言える。

高校では弾き語りができるようになりたくて、ギターをマスターするために軽音学部に入ろうとしたら、マンドリン部に誘われ、そこでクラシックギターを弾いていたという(ギターとマンドリンはセットで演奏されることが多い)。

こうして列挙してみると「歌手」という目標から微妙にずれていることが分かる。本人は大まじめだったと思うが、知らないうちに「目標にとらわれすぎない」という原則を満たしていたことが分かる。


路上シンガー宮崎奈穂子 武道館公演への軌跡 ~Birthday Eve~

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